日韓対立を読み解く(2) 文政権の反日マーケティング
2019/08/09

日韓対立を読み解く(2) 文政権の反日マーケティング

共産主義的な文大統領の演説

前回の「日韓対立を読み解く(1)」では、文大統領の演説から、「悪の日本」を「善の韓国」が乗り越えなければならない、という非常に素朴な二項対立の論理構造の存在を指摘した。ところで、日本の「経済覇権」(かつては日韓併合による支配)によって搾取されてきた「韓国国民」が、団結することによって「悪しき日本」を超克しよう、この論理構造は、共産主義革命の論理と非常に似通っている。

 

 

すなわち、土地や資金などをあらかじめ不当に占有した「資本家」の搾取に対し、「労働者」は団結して抵抗することで、正しい資源配分を実現しなければならない、これがマルクス主義の基本構造だ。レーニン主義はそこに、労働者=プロレタリアートによる暴力革命と権力独占という要素を加えた。これに理論的基礎を置くのが、現在の北朝鮮であり中国である。

 

 

この「労働者」を韓国に、「資本家」を日本に読み替えれば、そのまま文大統領の演説と同じ構造が出来上がる。この点で、文大統領の発想は、非常に共産主義的であると言ってよいだろう。

 

 

「反日マーケティング」の利益

こうした共産主義的な発想を持った文政権だが、彼はこの「悪しき日本」という反日マーケティングによって、利益を得ていることには注目してよい。

 

 

周知のとおり、文大統領は7月中旬以降、支持率を持ち直しており、8月第1週の支持率は48%に達した。これまで最低支持率は今年4月の41%であったが、来週以降は50%への回復も予想されている。日本という「共通の敵」を作り出すことによって、自らの支持固めに利用している構図だ。

 

 

韓国SBSテレビによると、文政権の政策研究機関は、政権の対日強硬姿勢が来年春の総選挙にプラスに作用するとの内部報告書をまとめた。7月18日には、大統領府民情首席秘書官が、「重要なのは左か右かではなく、愛国か利敵かだ」と述べており、「敵」である日本と戦うために団結するという姿勢は、7月からすでに既定路線になっていた。

 

 

「財閥」への攻撃

それだけではない。韓国では、文在寅大統領の率いる革新派と、朴槿恵大統領などの保守派との政治対立が存在するが、文政権は保守派の支持基盤である財閥を、主な政治的標的にし続けてきた。大統領選における公約では、その3番目に「公正で正義に基づく大韓民国」を掲げ、財閥の不法な経営承継や「皇帝経営」と呼ばれる経営権集中を根絶し、経済力の集中を防止するとしていた。背景には、サムスン、現代自、SKLGの4大財閥への経済力集中が挙げられ、この4大財閥だけで韓国の対GDP65.2%の資産総額を誇る。

 

 

こうした財閥に集中した経済力と経営権を、人民に返還せよ、文大統領の制作はこの点でも、非常に共産主義的である。資本家に独占された資源を、労働者に返還せよ、これはマルクスの基本テーゼに近い。

 

 

そして、文大統領は一貫して、財閥と日本と結びつけて攻撃してきた。彼は、自伝で次のように言う。

 

 

「(財閥と独裁政権という)親日勢力が解放後にも依然として権力を握り、独裁勢力と安保を口実にしたニセ保守勢力は民主化以後も私たちの社会を支配し続け、そのときそのとき化粧だけを変えたのです。親日から反共にまたは産業化勢力に、地域主義を利用して保守という名に、これが本当に偽善的な虚偽勢力です。」

 

 

この文大統領にとって「敵」である財閥が、どうすれば弱るか。その「最高」の解のひとつがサプライチェーン(供給網)の寸断である。文大統領は、日本の輸出管理政策について大騒ぎしてみせることで、この財閥に脅しをしかけると同時に、「我々の側(愛国)か、敵の側(利敵)につくか」という踏み絵を迫っている。実際には、日本の輸出管理強化によって、輸出が止まるわけでも制限されるわけでもなく、日本政府の説明の通り、許可を申請する仕組みが変わるだけで輸出者の手間が増えるだけなのだが、文大統領は今後、こうした手続きを経て日本から輸入しようとする財閥企業を「利敵」として叩き始めるだろう。そうすれば、彼らのサプライチェーンを寸断できるからだ。

 

 

「日本狩り」への道

前回指摘した、「日本狩り」が起きるのではないかという懸念は、こうしたプロセスから予期される。「日本はあれほど我々を攻撃しているのに、財閥は日本にすり寄り、利益確保を優先する利敵集団だ」と文政権は主張するだろう。そのとき、韓国世論はどう反応するか。すでに、日本製品の排除などが支持され始めているなか、「利敵企業」の排斥が始まる恐れは十分にある。そこで起きるのが、「過去の清算」も含んだ「日本狩り」だ。

 

 

何を大げさな、と考える向きもあるかもしれない。しかし、二項対立に規定されたなかで、マッカーシズム(赤狩り)やスターリニズムを、世界は経験してきた。マッカーシズムを、当初、アメリカ人の多くは一過性のヒステリーに過ぎないと冷笑していたのである。

 

 

我々は、この予期しうる脅威を冷笑せず、真剣に対応を検討しておく必要があるのではないか。では、何が可能か、次回考えてみよう。

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