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「増税か財政破綻か」を超えて:「トランプイズム―大規模減税と規制緩和」セッション

 2018.11.17
「増税か財政破綻か」を超えて:「トランプイズム―大規模減税と規制緩和」セッション

アメリカ政府でいま、もっとも強力に政府予算の削減を推進し、トランプ政権の減税政策を現実的なものとしている人物、それが合衆国行政管理予算局長であるミック・マルバニーである。今回のJ-CPACでは、マルバニー局長が3回の登壇を予定しているが、その初回が初日12時15分からのセッション、「トランプイズム―大規模減税と規制緩和―」だ。

 

セッションの焦点はずばり、「減税と規制緩和によって経済の回復は可能なのか」、である。政府支出を増大させ経済に「カンフル剤」を与え続ければ経済の好循環が発生するというケインズ経済学的発想はもはや過去のものとなったが、それでも減税と規制緩和はいかほどの効力を持つのか、という疑問は、聴衆としても関心を持つところだ。

 

マルバニー局長は、ポール・クルーグマン(ノーベル経済学賞受賞者)が不可能と主張した「年率3%の経済成長」をトランプ政権がわずか18ヶ月で達成したことを示し、「個人の経済的自由を尊重することが、経済の好循環を促す」と指摘した。局長の言葉を借りると、「我々こそ市場(We are the market)」なのである。個人の尊厳を尊重し、個人の経済的自由を尊重することこそ、現代世界において求められる経済対策なのだ、と局長は主張する。

 

同じことは、登壇者である内山優氏(日本税制改革協議会会長)も、「自分の資金の用途は自分で決めることが効率的なのだ」と、大いに訴えたところだ。「経費節減・民力休養」、すなわち政府支出の削減と減税を訴えて成立したのが日本の議会であったはずなのに、なぜいまや「増税のための議会」となっているのか、内山氏の問いは重要である。

 

むろん、災害に対応するインフラ整備や、国家安全保障が重要であるのは、言うまでもない。この点を強調したのが田村秀男氏(産経新聞経済部)である。田村氏は、「財政再建」という魔術に惑わされず、消費税を中心に減税しつつ、喫緊の部分の投資は可能であることを、データをもとに強調した。

 

究極的にこれらの「経済的保守主義」が示すのは、「個人の尊厳が第一」ということである。「アメリカ第一主義」「日本第一主義」というと、非常に国家的なものを示しているように感じられるが、そうではない。政府の権限をできる限り縮減し、個人の活発な経済生活を促す。そこに、「財政再建か、さもなくば財政破綻か」という日本の不毛な議論を超克する術があるように思われる。