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【緊急寄稿】トランプ大統領の電撃訪問が示すもの

 2019.07.01
【緊急寄稿】トランプ大統領の電撃訪問が示すもの

いまだかつて、北朝鮮の最高指導者を、前日に会談へと「呼び出す」ことができたアメリカ合衆国大統領など、いなかった。おそらく、中国や旧ソ連の最高指導者とてできはしなかっただろう。もちろん、通信手段の発達と個人的な両者の信頼関係があってのことだが、それにしても、これはある種の「異様な光景」と言ってよい。

 

 

周知のとおり、トランプ大統領はG20を終えて訪韓するに先立ち、非武装地帯を訪問すること、そしてそこで金正恩委員長と会談することを希望している、というメッセージを629日午前中にTwitterに投稿した。そして、金正恩委員長がそのことを知ったため、米朝両政府が緊急に連絡を取り、会談が実現した。

 

 

この会談が意味することは、次の2点だ。

 

 

1に、トランプ大統領の「フットワークの軽さ」が膠着を打開したことである。2月のハノイでの会談決裂以降、米朝関係は膠着状態に陥っており、金正恩委員長は「関係国から孤立している」と周囲に漏らすありさまだった。そのことをおそらくトランプ大統領は知っていたのだと思われるが、ロシアに軽くあしらわれ、中国からも思うような支援が得られない状況に陥った北朝鮮に、鮮やかに打開策を示して見せた。

 

 

通常であれば、「石橋をたたいて渡る」より警戒して事に臨むであろうことも、トランプ大統領は持ち前の胆力と度胸で乗り越えてしまった。これを鮮やかだと思わない人はいないだろう。

 

 

2に、水面下で交渉パイプが生きていたことが明らかになった。実務レベルではこちらが重要かもしれない。

 

 

Twitterでトランプ大統領が発信してのち、わずか40時間足らずで首脳会談がセットできるということは、トップダウンの指示だけではなし得るものではない。つまり、官僚などの実務者レベルでは、接触のチャンネルが生きていたことが明らかになった。これは、今後も「偶発戦争」のおそれを下げるなど、有効な機能を持つだろう。

 

 

電撃的な首脳会談で、実務者級協議の再開に合意がなされ、ポンペオ国務長官も7月から協議が再開されるとの見通しを示した。これが非核化という実を結ぶか否かについては楽観を許さないが、少なくとも継続的な交渉が開かれたことは、地域の平和と安定のために喜ぶべき事態には違いないだろう。