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地方選挙の「なり手不足」と独立自尊

 2019.05.08
地方選挙の「なり手不足」と独立自尊

日本の地方自治を決める、統一地方選挙が終了した。この選挙で驚くべきことのひとつは、大都市や中規模都市であっても、首長や議員のなり手が不足しているということである。

 

これまで、立候補者が少なく無投票となる選挙は、人口の少ない地域で起きるものと考えられてきた。ところが、今回の選挙では、県庁所在地である三重県津市や香川県高松市など27市で市長選は無投票となった。このなかには、温泉などで知られる大分県別府市なども含まれる。

 

議会レベルでも、道府県議選は1440選挙区、市議選は67選挙区で無投票となった。このなかには、横浜、名古屋、札幌、福岡、熊本といった政令指定都市も含まれている。

 

地方議員のなり手不足は、「住民の代表」である「議会」の存立基盤を脅かす重大な事態だ。特に、地方議会議員選挙は住民の多様な意見を選挙という仕組みを通じて反映をする「民主主義の原点」だ。多様な意見の反映はレジリエンスの高い社会構造を建設し、強い地域、国家を建設する第一歩につながる。

 

無論、JCUの理念である保守主義も「政治参加の自由」を柱の一つにしている。

 

民主主義の根底を支える地方議員のなり手を増やすためには、夜間議会の導入やサラリーマンを続けながら議員を兼職できるような働き方改革など、時代に合わせた仕組み作りが求められる。

 

人口減少と少子高齢化という危機が現実化している地方では、地方自治を議会や役所に丸投げするだけでは済まされず、住民がより積極的に政治参加し、意思決定をしていくことが求められことが予測される。

 

実際、人口400人の高知県大川村では村議会議員のなり手がおらず議会を廃止する「村民総会」を宣言したが、地域への愛郷精神と危機感から「議員兼業条例」が成立し、今回の選挙で28歳と34歳の候補者を含む新人3人が当選した。

 

こうした地域の課題を通して、地方自治のあり方が主権者として問い直されることとなるであろう。

 

しかし、現在の議会は、首長・役所が提出する議案に対しての「追認機関」となっており、必ずしも本来の姿である「行政の監視」という役割を果たしているとは言い難い。

 

また、立法府でもある地方議会の議員提案条例の提出数についても全国814市平均で1.8件しかない。(出典:全国市議会議長会「市議会の活動に関する実態調査結果:平成29年中」)ここから成立する条例数を考えると立法機関としての議会の役割についても及第点すら付けられないだろう。

 

こうした議会の状況を考えれば、議会のなり手を増やせば行政や地域が変わるとも安易に言い切れない。最終的には、よりよい地方議員を選出し、地方議員の活動をチェックする主権者一人一人の意識が問われることとなる。

 

地方自治は「民主主義の学校」と言われるが、地域社会の課題を解決していくことを通して、より良い地域社会を実現する合意形成のプロセスが社会の紐帯として、政治に必要だということを含意している。

 

地方自治をないがしろにすることは、主権者としての責任の放棄となり、他人任せの社会、ひいては国家の未来を傍観することになる。これは保守主義とはそもそも相容れない考え方であろう。

 

結局は強い地域や国家を作るためには、独立自尊の個を作るということが大前提になる。地方議員のなり手不足という問題は強い個、特に強い主権者を作っていく重要性を我々に提示をしたと言えよう。「一身独立して一国独立す。(福沢諭吉)」これが令和の政治のキーワードになりそうだ。