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【緊急声明】「見捨てられる恐怖」を超えた日米同盟に向けて

 2019.06.28
【緊急声明】「見捨てられる恐怖」を超えた日米同盟に向けて

巨大な力を持つ国家Aと、相対的に小さな力を持つ国家Bが同盟を組むとき、「国家Aは危機の際に自分たちを助けてくれないのではないか」という恐怖心を国家Bは持つ。こうした状況は軍事同盟一般に生じる心理であり、「見捨てられる恐怖」と呼ばれる。

 

 

 今般、ドナルド・トランプ大統領が日米同盟の破棄に言及したということが、メディアを賑わわせている。日本側のメディアは特に、「すわ、日米同盟の危機か」とヒステリックな反応を見せているが、これこそ、自国が「相対的に小さな力」しか持っていないと思うがゆえの「見捨てられる恐怖」に取りつかれている証左である。私たちが考えなければならないのは、こうした「見捨てられる恐怖」を超えた日米同盟の深化であり、そのために何ができるか、である。

 

 

 トランプ大統領が日米同盟の現在の在り方に不満を抱いているのは、事実のようである。騒動の発端は、側近との私的会話の中で大統領が条約を「一方的だ」と断じ、破棄に言及した、というブルームバーグの報道であった。さらに、626日に放映されたFOXビジネスのインタビューで、「日本が攻撃されれば米国は彼らを守るために戦うが、米国が支援を必要とするとき、彼らにできるのは(米国への)攻撃をソニーのテレビで見ることだけだ」と述べている。

 

 

 そもそも踏まえておきたいのは、アメリカ政府によって日米同盟の在り方に疑問を呈されるのは、決して珍しいことではないということだ。1990年代まで、日米同盟は「人と人の協力」ではなく、「人と物の協力」(日本は基地を、アメリカは兵士を提供する関係)であるとして、日本人は米兵の生命を基地とお金で買っていると非難された。記憶に新しいところでは、民主党の鳩山政権時代に、同盟の不適切なハンドリングによってアメリカ側は大いに不満を募らせた。

 

 

 これらに比べたとき、トランプ大統領の発言が極端なわけではない。日本はもちろん、1990年代の「同盟再定義」以降、日米同盟の深化に向けた努力は続けている。しかし、費用面でもGDP2%に満たない防衛支出や、辺野古移設に対する左派活動家の妨害など、同盟深化への障害がないと言うことはできない。トランプ大統領の性格を考えれば、ドイツなどにNATOへの支出増を求めているのと同じく、来日を前にした「ディール」の一環と考えるのが妥当だ。

 

 

 トランプ大統領の不満表明を、私たちはヒステリックに受け止めるべきではない。それは、自分たちの内心の「見捨てられる恐怖」を発露しているに過ぎない。それを乗り越えられるほどの信頼を相手に持っていないからこそ、一部のメディアの扇動に乗せられてしまう。日米同盟の深化のために私たちは、より一層の信頼醸成に努め、また自国の国力を高めることで応分の負担要請への回答を用意しておくことが、必要だろう。