ドナルド・トランプ大統領は、令和初の国賓として訪日を果たした。今回の訪問が示したのは、日本とアメリカが相互を重要なパートナーであると認識しているだけでなく、トランプ大統領と安倍首相も個人として緊密な関係を維持したいという意思を持っているということだ。
日本を必要とする大統領
トランプ大統領は、訪日初日の5月25日から精力的であった。日本経済界リーダーたちとの会合、安倍首相とのゴルフ外交、大相撲千秋楽の観戦と表彰式、六本木居酒屋での夕食会、天皇皇后両陛下との面会、晩餐会晩餐会など、盛りだくさんである。アメリカのエリートメディアのなかには、「観光客のようだ」と皮肉ったところもあったが、観光客よりよほど大変である。考えてみていただきたい。時差も物ともせず、73歳になろうとする人物が、これだけの会談と行事をこなしたのである。どれだけトランプ大統領が精力的で、かつ日本を重視しているか、それだけでもわかろうというものだ。
実際に、トランプ大統領は安倍首相を必要としている。例えば、トランプ大統領の就任以降、フランスやドイツとの関係は、NATOの軍事支出問題などをめぐり、悪化している。アメリカと「特別な関係」にあるイギリスは、EU離脱問題で揺れており、安定的な関係構築が難しい。そうしたなか、主要国でトランプ大統領と良好な関係を維持できている安倍首相は、最も親しいパートナーになっているのである。来年11月の大統領選挙を見据えても、トランプ大統領としてはできるだけ多くの外交実績を残したいのであり、そのためにも安倍首相との関係は重要なものになっている。
日本の戦略的意図
今回のトランプ大統領訪日からは、同時に、安倍首相の戦略的意図も読み取れる。すなわち、将来的なアジア・太平洋地域の安定と繁栄を考慮すると、中国の影響力拡大もあり、日本は米国との緊密な関係がさらに必要で、日米関係を基軸にいっそう主体的な役割を担っていこうとする戦略がある。
また、北朝鮮や韓国にも大きなメッセージに送ることになるだろう。北朝鮮にとっては、米国との国交正常化において、日本とも真剣に向き合っていくべき必要性を感じさせるものとなったであろう。安倍首相が意欲を示す日朝直接会談についても、何かしらの姿勢を見せてくるかも知れない。
現在の韓国政府については、日米両国は強い不満を持っていることも明らかになった。安全保障上、北朝鮮、そして中国に対峙していくには日米韓の協力・連携が必要であり、本来であれば文在寅大統領は、現在の安倍・トランプ関係に加わる形で対北政策を実施してくべきだ。ところが、ちょうど1年前の南北首脳会談でうたわれた朝鮮半島の完全な非核化は全く前進しておらず、南北関係は停滞の方向へ進んでいる。トランプ大統領は今回の訪日のあいだに、非核化が全く進んでいないため、韓国に困惑していると安倍首相に伝えた。現在の安倍・トランプ関係は、決して韓国を排除しようとするものではないが、両者の緊密な関係が示せたことは、韓国にとっても一定のシグナルとなったはずである。
今後も続く「相思相愛」の日米関係
結論としては、今回のトランプ訪日で、如何に日本が米国を必要としているか、また如何にトランプ大統領が安倍首相を必要としているかが浮き彫りとなった。大統領はいま、混乱している欧州よりも日本に目を向けており、両国の関係をより緊密にするチャンスである。国益を考えても、日本は米国と戦略的互恵関係を発展させる絶好の機会を得ているのだ。
今後も、6月に大阪でのG20サミット、8月にフランス・ビアリッツでのG7サミットと、日米首脳の会談予定は詰まっている。トランプ大統領就任時にあった日米関係の行方を懸念する声は、今となっては完全に葬り去られたようだ。今後も、少なくとも来年11月の米大統領選挙まで、この良好な安倍・トランプ関係が続いてゆくだろう。