JCUでは、日本経済のさらなる成長と国民一人一人の経済的豊かさを実現するために、自由主義経済による経済成長の可能性を検討して、オピニオンとしての政策提言しております。
菅新政権が掲げる「国民のために働く内閣」というテーマが、国民の自由な経済活動を活性化させるものとなるよう、自由・減税・規制緩和など、財政保守(fiscal conservative)のあり方を研究し、現実の政治をイノベーションしていくシンクタンクとしての取り組みもさらに進めてまいりたいと思います。
このようなJCUのミッションを果たす一貫として、自由主義経済の意義を考察し、様々な視点から研究・提言している自由経済研究会と連携しております。本年9月12日〜13日に開催されました「自由経済研究会2020」に参加し、JCUマット・ノイスがレクチャーを行いました。
- 自由経済研究会
「自由経済研究会」は、オーストラリア学派ルードヴィヒ・フォン・ミーゼスに師事した日本人で唯一となる村田稔雄先生(横浜商科大学名誉教授)の勉強会として、2009年より開催されてきました。しかし、2016年を最後に、後進に託され、自由経済研究所代表・吉田寛教授を中心として、2017年より自由主義社会の学術研究と社会実践を志す有志によって「自由経済研究会」として開催されています。
村田稔雄先生は、ミーゼスの弟子であるハイエクとは同期であり、ミーゼス、ハイエクの努力により、ケインズの「大きな政府」からレーガン大統領による保守革命への流れが推進されました。このような学術研究を日本に紹介した起点に位置する存在となります。
村田稔雄先生はミーゼスの大著『ヒューマン・アクション』『自由への決断』の翻訳をされています。
今回は、コロナ禍での開催のため本会場は人数を制限し、オンライン参加もあり、入国制限の影響に配慮して海外からのオンライン・レクチャーもありました。
- JCUマット・ノイスのレクチャー
「反道徳な社会主義」
この講義で、マットは社会主義が非効率的な制度であるだけでなく不道徳でもあると主張しました。多くの人々(特に若者)は社会主義がより平等であると信じているので、これに対して反論する必要があります。大学でのコンサバティブ活動の体験を生かして、自由を支持する為に一部の人々を説得し、道徳的なレベルで議論する必要があると主張しました。
彼が、社会主義は不道徳であると主張した理由は以下の通りです。:個人の権利の否定、自己犠牲を前提とする、強制と服従を必要とする、反人間的、権利は政府/集団から与えられる等。簡単に言うと社会主義の制度は個人の権利を否定するので、個人は幸福の追求ができないのです。
- レクチャーダイジェスト
地元自治体である四日市市の森智広市長が挨拶に来られて「行政改革日本一の公会計について」レクチャーされました。複式簿記を導入するだけではなく、3月決算を受けて、この9月議会において決算書類を基に、次年度予算編成を検討するところまでスピードを速めている自治体はまだ少数であるが、「決算なくして予算編成もない」状況に変えていく必要があると自治体の行財政改革を推進する立場を明確に示されました。
また、JTR(日本税制改革協議会)の納税者保護誓約書に署名をして、11月に予定されている選挙に向けて決意を新たにされていました。
尾近裕幸教授
「社会主義共和国における経済計算について〜ミーゼス100周年に論争を結論づける〜」では、1920年にミーゼスが著した書籍について、様々に議論が重ねられていますが、経済学史学会のために準備した論考をいち早く披露されて、2020年という一世紀におよぶ議論の節目として、社会主義は成立しないことを結論づけられました。
蔵 研也教授「バスティアThe Law」
マルクス経済学・ケインズ経済学・マネタリズム(フリードマン)・オーストリア学派(ハイエク)という経済学の全体像を踏まえて、ミーゼスやハイエクよりも以前において自由主義と社会主義の論戦が行われていたフレデリック・バスティアの業績を再考して、現代の最先端の経済問題の解決に応用することを考察した非常に視野が広がる講話でした。
馬場晋一教授「市場メカニズムと企業:ヒューマン・アクションから学ぶ」
ミーゼス著「ヒューマン・アクション」を基に、ミクロ経済や起業におけるファイナンスなどの立場から、マクロ経済政策のあり方を再検討する必要がある現在の日本において非常に重要な視点について参加者と共に議論を重ねました。
ハワイからKen Schoolland教授「コロナ時代の移民」Li Schoolland教授「自由と責任」では、政府が介入した国ほど、死者数が多くなっており、介入が少ない国ほど、被害が最小限になっているデータを基に、自由の重要性を具体的に示す内容でした。また、コロナ禍によって政府の介入が増えているが、政府に依存することは楽であるが、政府に依存せず責任を持って自由を選び取ることの大切さが問われている時代であることを考えるレクチャーでありました。
ジョージメイソン大学で研究活動をしているKarras Lambert PhD.fellow「Praxeologyとは何か」というテーマで、行動経済学の分野についての学術研究の報告がありました。
自由主義経済学に関する著書を多数翻訳している岩倉竜也先生からは、ロスバード著「経済不況 その原因と対策」についてのポイント講義があり、世界恐慌を元に何が問題であったのかを明確に分析して、政府の介入による経済に与える問題について具体的な事例を通して説明されました。
吉田寛教授「限界の税」
税は義務説や交換説や公需説が挙げられるが、本来、主権者が認める承諾説があるべき姿であること。そして、令和2年における日本の税負担は、「納税者の日」が6月12日(6月12日までの給与が税金として奪われる状態)であり、「子供の日」が7月1日(財政赤字まで含んだ場合は7月1日までの給与が税金として奪われる状態)となっている現状を踏まえて、国民が健全な経済活動を行い、経済効用を増加するための税負担は25%以下でなければならないことを検証しました。
中村英一氏の「自由民権運動逍遥記」では、静岡県伊豆地域の現・松崎町(中川村)の三聖として顕彰されている土屋三餘・依田佐二平・依田勉三を中心に自由民権運動の歴史に学び、現代における草の根運動の大切な視点を学びました。
自由民権運動は、単なる国会開設建白書や普通選挙権の要求運動ではなく、地域において地に足をつけた人物たちが、⑴教育の普及、⑵地域産業の振興、⑶社会貢献の3つの要素を元に国会議員になる等、政治的活動も行ったことは見逃せない点であることが報告されました。
土屋三餘は「三余塾」で人に上下なく、農民が武士と対等になるために教育が必要であるとして、農業の三つの余暇である「雨・夜・冬」において勉学に勤しむことを実施。三余塾に学んだ依田佐二平は、妹らを富岡製糸場に派遣し実習させて、生糸を地域産業として興し、世界的品質として評価されるまで改良、沼津〜東京間の航路を開き交易を盛んにし、衆議院議員としても活躍。また、依田家の経済力を基に北海道開拓の晩成社を創立して、弟の依田勉三が、十勝開拓の祖となり、酪農業を興すことになり、地域の活性化が近代日本の繁栄を築いていくことになりました。
様々な学びを通して、先人の研鑽に学び「温故知新」すると共に、同じ志を持つ全国全世界の友人たちとネットワークを広げていく有意義な機会となりました。