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「税金を集めて流す」ではない開発援助:政府ではなく、1人1人がプレイヤー -SDGs特別セッション

 2018.11.22
「税金を集めて流す」ではない開発援助:政府ではなく、1人1人がプレイヤー -SDGs特別セッション

「持続可能な開発目標(SDGs)」とは、2015年9月の国連総会で採択された、国連の開発目標である。世界全体の持続的な開発のため、17の「グローバル目標」と169の達成目標から構成される。

 

さて、なぜ保守主義を志向するJ-CPAC2018において、国連の開発目標を取り上げるのか。保守主義は、個別国家の主権を重視するという点で国連と折り合いが悪く、また各国国民の税金を途上国に「垂れ流す」がごとき国際援助とはどう考えても相性が良くない。だが、そのテーマを敢えて取り上げることにこそ、J-CPAC2018の意義がある。

 

各国の保守主義者の連帯を目指すJ-CPAC2018において、まず考えなければならないのは、「何者から我々を保守するか」ということだ。改めて言うまでもなく、我々の自由や安定を脅かし、現在の国際秩序を不安定化しているのは、中国でありロシアである。これらが、「一帯一路」などの戦略的政策を国際的に展開しているとき、保守主義者も連帯してこれらに対抗すべきであろう。これが、我々がSDGsを取り上げなければならない所以である。

 

この点について、松川るい参議院議員は的確にも、「力の政治が当面続く」国際政治の現状のなかで、我々のこととして、オーナーシップを持ってSDGsに取り組む必要を訴えた。SDGsは、企業や投資家による自発的な取り組みを促し、「先進国の税金を使って助けよう」ではない援助の在り方を模索する政策目標なのである。

 

外務省での豊富な国際経験を活かし、SDGについて解説する松川るい参議院議員

 

こうした自発性を重視する概念であるからこそ、各国に「義務」や「制裁」が科されていない。この点をとらまえてSDGsの実効性を疑うのは誤りだ、とポポフスキー国連大学教授は指摘する。各国政府の無謀な行動を規律づけるのは、制裁などに裏付けられた「ハード・ロー」ではなく、認識や規範意識を収斂させるような「ソフト・ロー」だと教授は指摘した。

 

「レーガンとサッチャーは私のヒーロー」と言い切るポポフスキー教授

 

この点は、サム田淵国連欧州経済員会常務理事の発想とも重なる。日本が「一帯一路」へのカウンターとして打ち出したクオリティ・インフラストラクチャ(質の高いインフラ)という考えは、持続可能な開発という目標にぴったりと適合し、中国政府もこれに同調せざるを得ない状況を形成している。

 

国連でSDGsの策定にも携わったサム田渕教授

 

すべての人について、レジリエントな生き方が可能になる未来を構想することも、保守主義に求められる役割である。SDGsは、「税金を集めて流す」方式の従来の援助からの転換を促し、企業や投資家の自律的判断が可能な、新たな開発目標なのである。