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「核保有の議論開始こそ抑止力」:How to 核武装セッション

 2018.11.19
「核保有の議論開始こそ抑止力」:How to 核武装セッション

なんとも刺激的なタイトルである。「How To 核武装」。唯一の被爆国として国際社会に核軍縮・廃絶を呼び掛けてきた日本において、このことを議論することそのものが「倫理的にあってよいことなのか」を問わなければいけなかった。それは事実だ。

 

J-CPAC2018に登壇した藤井厳喜氏

しかし、国際政治学者である藤井厳喜氏は、日本はやがて核武装しなければならなくなる状況に立たされる、と指摘し、その条件として(1)北朝鮮の核武装の完成、(2)南シナ海の中国支配の完成、を挙げた。北朝鮮が核兵器の威嚇によって本邦を脅かし、シーレーンを中国の戦略原潜が我が物顔で航海するようになったとき、我々は安閑と「非核」を貫けるのか、と藤井氏は指摘する。いつまでも核武装がタブーであり続けることで、より大きな危険を招き寄せてしまうという危機感がそこにある。

 

How to 核武装セッションの様子(左から2人目が織田氏)

元航空自衛隊空将であった織田邦男氏は、核武装した3カ国(北朝鮮・中国・ロシア)に取り囲まれているにもかかわらず、我々はそれを「見なかったこと」にして安心しているのではないか、と指摘する。織田氏の分析によると、北朝鮮は将来にわたって核放棄しない。金正恩体制の正統性に関わるうえ、カダフィやフセイン、あるいはウクライナ(ブダペスト合意)の末路を理解しており、核放棄による「保証」など信じられるはずがないのである。そうであるなら、核兵器を抑止する手段が必要であり、いわゆる「懲罰的抑止」の一環として核保有を議論すべきなのだ。

 

ACU事務局長ダン・シュナイダー氏

もちろん、日本は技術的に核兵器を保有することはできても、実際に保有「できるか」については、低くないハードルが存在する。この点を、ACU事務局長のダン・シュナイダー氏は、「3つの課題」としてまとめた。すなわち、(1)政治的支持の欠如、(2)核拡散防止条約(NPT)をはじめとした法的制約、(3)国際的反応、である。国内的支持が不十分であるのみならず、NPTをはじめとした核保有への強い規制が存在するなか、日本の核保有は容易ではない。

インドの中国研究戦略センター(CCAS)所長、ジャヤデヴァ・レナード

 

だが、ジェイ・レナード氏がインドによる核武装の理由として示したように、侵略的な国家(インドの場合にはパキスタンと中国)に囲まれているとき、実行的抑止を考えるのは国家の責務である。シュナイダー氏、レナード氏ともに、こうしたハードルを乗り越えて日本の核武装が実現すると、自由主義陣営にとって好ましい環境が創出されると指摘した。

これらを踏まえていま、日本が取り組むべきなのは核武装についてタブーを解き、「真剣に議論する」ことだ。これはすべての登壇者の意見の一致するところで、核により圧力を加える諸国は、日本が真剣に核武装を議論し始めた段階で戦略修正を考え始めるはずだ。なぜなら、物理的な核保有はそれほど日本にとって高いハードルではないからだ。つまり、「真剣な核武装論議」こそ、日本がすぐにでも始められる「抑止」戦略の第一歩なのである。