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「新独立自尊」 第10回 エリートメディアを「虜」にするチャイナマネー(JCU議長・あえば直道)

 2019.04.05
「新独立自尊」 第10回 エリートメディアを「虜」にするチャイナマネー(JCU議長・あえば直道)

中国政府は、同国のイメージを良くし、世界各国の世論を誘導するため、資金を「惜しみなく」ばらまいている。そんな衝撃的な内容を、イギリスの高級紙ガーディアンが、昨年12月に報じた。

 

タイトルは「中国の大胆な世界的プロパガンダ戦略の内幕」(Inside China’s audacious global propaganda campaign)。同紙は冒頭で、「北京政府は中国の話をより良く書かせるために、メディアの発行物や外国人ジャーナリストを多数、買収している。それは、驚くべき規模と野心に基づく世界的なプロパガンダ戦略の一環だ」と伝えている。

 

記事によると、中国がこうした戦略の必要性を理解したのは、1989年の天安門事件、チベットでの蛮行などが世界的に伝えられた時期からだという。これにより中国政府は、自国の国内問題について、「防御的で、国内向けの反応を中心」として報道をしていかなければならず、必然的にそれは暗く、対外イメージを操作できるようなものではなかった。

 

ところがこの十年で、中国は反転攻勢に出る。国外の視聴者を意識し、情報環境を自国に有利にしようと動いたのである。中国政府は「グローバルな情報環境を多額の資金によって再形成しようとし、広告、特集記事のスポンサー、良好なメッセージの発信に多額の資金を投入した。中国国内向けには報道を厳しく制限しつつ、国外では自由な報道の脆弱性をうまく利用しようとしたのだ」、ガーディアンはこのように伝えている。

 

この買収の対象となったメディアは、きらびやかなほどに「エリートメディア」が並んでいる。

 

アメリカでは、二大高級紙といわれるニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストをはじめとし、ウォールストリート・ジャーナル、シアトル・タイムズ、ロサンゼルス・タイムズが並ぶ。イギリスではデイリー・テレグラフ、フランスはル・フィガロ。日本での知名度はそれほどないが、タイのザ・ネイションやオーストラリアのシドニー・モーニング・ヘラルドといった高級紙も並ぶ。なお、日本でも毎日新聞が中国政府に資金提供を受けたと名指しされている。

 

こうした企業やジャーナリストは、中国政府の資金提供を受けた記事を書き、掲載する。また、中国政府はジャーナリストたちを招待し、国内を見学させる旅行を企画する。参加者は、上海などの経済発展を見せつけられ、「素晴らしい旅だった」と感激して帰る、というわけである。中国はこうして、敵対的な国家が中国の利益に反する行動をとりづらくなるよう、その国内および国際世論に影響を及ぼすことを狙っている。

 

ある意味ではこうしたやり方は古典的だ。イギリスの外交官にして国際政治学者であるE.H.カーは、ヒトラーの脅威に直面するなかで著した『危機の二十年』のなかで、「世論の力」(power of opinions)の重要性を指摘している。その意味では、決して目新しいやり方ではないのだが、記事のタイトルにあるように、現代社会において実に「大胆」な手法である。

 

もちろん、資本主義社会であり、「報道の自由」がある以上、どのような記事を書き、誰から資金提供を受けようと、自由である。その意味では、記事にある通り中国政府は、我々の社会の脆弱な点を実にうまく利用しているだけだ。

 

しかし、公正性や中立性を標榜するエリートメディア、なかでもリベラルを自任するニューヨーク・タイムズなどが、個人の自由を圧殺する中国政府から資金提供を受け、その「提灯記事」を載せているとなると、これは欺瞞という他ない。

 

中国が経済発展を続け、潤沢な資金を持てば持つほど、こうした活動は活発化してくるだろう。ガーディアンがこうした報道を行ったのはある意味で「報道の自由」が健全に機能したからなわけであり、本邦の有志やメディア(我々を含めてだが)は、こうした真相を明らかにするため、一層の奮起が必要だ。

 

参照記事

The Guardian, 7 December 2018, Inside China’s audacious global propaganda campaign, https://www.theguardian.com/news/2018/dec/07/china-plan-for-global-media-dominance-propaganda-xi-jinping